2019年11月26日、各企業が推進する働き方改革とリゾートワーケーションという新しいワークスタイルをテーマに、第2回リゾートビジネス研究会を開催。
軽井沢は、東京から北陸新幹線で62分と近く、標高約1000m・夏期の平均気温20度と大変冷涼な高原リゾートだ。標高1000mは人間の胎児と同等の気圧であり、人間にとって最もすごしやすい環境であると言われている。また森林の比率も高く、そのような環境にいると五感が刺激され飛躍的にアイデアが出るといわれている。これは「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳活動の一種で、医学的にも証明されている。
通勤定期所有者が500人、通勤定期非所有者入れると、日々1000人以上が軽井沢と東京を往復しているので、東京との情報格差は全くない。また別荘所有者のコミュニティー、大学のOB会など様々な組織があり、圧倒的な人的ネットワークを形成している。そこでは様々な情報が飛び交い、イノベーションが誘発されやすいので、ビジネスには最適な環境と言えよう。最近では、コワーキングスペース、イノベーション誘発型コサテライトオフィス、宿泊型コワーキングスペース、アイデア会議専用貸し会議室など多種多様なワークスペースが15か所以上オープンしている。また通年型の日本でトップレベルのカーリング施設はじめ様々なスポーツ施設がある。特にカーリングは、チームビルディング、管理職研修、などで多くの企業に活用されている。
日本航空では、2015年に「誰でも活躍できる生産性の高い職場へ」というコミットメントを設け、ワークスタイル変革に着実に取り組んできた。総実労働時間を年間1850時間に定め、コアタイム無しのフレックス制と週2回までのテレワークを可能とする制度を導入。これにより、社員は自身のオンとオフを以前よりもきちんと把握するようになった。また残業ゼロを目標とすることを明確にうたったことで、近年では産休明け直後でもフルタイムで働くママ社員が増えてきている。里帰りや海外旅行など長期休暇中の旅行先での仕事を勤務時間として認めるワーケーションも、2017年から導入している。当初、社員の中には休暇取得を不安視する向きもあったが、初動よりワークショップを実施することや、ワーケーションの説明サイトを開設するなど、社内での認知にも努めた。
さらに勤怠管理システムにワーケーション勤務の選択項目を設置することで浸透を図ったり、リモートワーク全体としては災害時のテレワークの重要性などを伝えることで、徐々に遠隔地で働くことに対する不安の声も軽減してきた。現在では、地方創生への貢献も兼ねたワーケーションモニターツアーの実施など、持続的な発展の可能性を探っている。
何事においても『量より質』が求められるようになった現代においては、自ら行動を起こし、環境に変化を持たせることがますます必要になってきている。以前なら、家、会社、旅行先などロケーションが目的ごとに分断されていたが、デジタルデバイスの普及により、生活時間のシームレス化が可能になった現代では、リゾート地でリフレッシュしながら仕事に取り組むこともできるようになったことで、ワーケーションの需要も高まってきているのではないか。
長期休暇の取得が当たり前の海外では、必要な時に効率よく仕事をするスタイルが昔から広く定着している。東急バケーションズでは、長期滞在向けに、各部屋にキッチンや広めのダイニングテーブルを用意しているが、少人数でのミーティング・研修や、共に暮らすように過ごすことでのチームビルディングなど、ワーケーションにも有効に活用できる施設を提供している。また、テレワーク体験会を開催するなど、ワーケーション活用を働きかける試みを積極的に行っている。
若者たちの仕事に対する意識が変化し、働き方についての古典的な概念はもはや消滅しかかっている。若者に対するモチベーションやイノベーションのコンテクストの中で、多くの企業がリモートワークやワーケーションをポジティブアクションとしてとらえていることもあり、働き方改革は今後ますます進展することだろう。テレワークの普及により、都心でなくても、地方でも働いたり、住んだりすることも可能になってきた。 また、来年は五輪の開催で、東京を中心にリモートテレワークを採用する企業が増えることだろう。リゾートテレワークの市場も広がりを見せていくのではないか。